肺がんと診断された方へ|まず最初に知っておくべきこと
肺がんと診断された直後は、「自分は何期なのか」「手術できるのか」「薬で治療するのか」「どの病院で治療を受けるべきか」といった不安が一気に大きくなります。
肺がんは、同じ“肺がん”でも、小細胞肺がんなのか、非小細胞肺がんなのかで治療の考え方が大きく異なり、さらに非小細胞肺がんの中でも腺がん、扁平上皮がんなどの組織型や、遺伝子異常の有無によって治療選択肢が変わります。
転移しやすい場所としては、リンパ節、肺のほかの部位、胸膜、骨、脳、肝臓、副腎などが知られており、手術の適応や見通しにも影響します。
本ページでは、
・ステージ別生存率
・肺がんの型(組織型)と治療法
・手術、抗がん剤、免疫療法、分子標的薬の違い
・転移や症状、進行の見方
・治療後の生活
・病院選び
を一つの流れで整理し、治療や病院選びを考える際の参考となる情報をまとめています。
| ■補完療法(漢方)に関する参考情報【広告】 抗がん漢方薬の最新資料(書籍・体験談集ほか)と無料サンプルのご案内です。 |
肺がんステージ別生存率(全国集計)
下記は、院内がん登録の公表データをもとに整理した肺がんのステージ別生存率です。
生存率データには、ネット・サバイバル(純生存率)の数値を記載しています。
| stage | 5年生存率 (2015年診断) | 10年生存率 (2012年診断) |
| Ⅰ | 81.9% | 63.9% |
| Ⅱ | 51.7% | 30.9% |
| Ⅲ | 29.3% | 14.8% |
| Ⅳ | 8.6% | 2.5% |
| 全平均 | 45.1% | 30.3% |
出典:国立がん研究センター「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム」
※がん種および診断年を選択して表示される全国集計データをもとに整理していま
生存率の正しい見方|「自分はどうなのか」を考える
肺がんの生存率を見ると、ステージⅠとステージⅣでは大きな差があります。
ただし、この数字は過去の患者全体の集計であり、個々の余命をそのまま示すものではありません。
肺がんでは、ステージに加えて、組織型、小細胞か非小細胞か、遺伝子変異の有無、手術が可能か、薬物療法が効きやすいタイプかによって見通しが大きく変わります。
特に非小細胞肺がんでは、特定の遺伝子異常が見つかると分子標的薬が選択肢になり、治療の流れが大きく変わることがあります。
肺がんで重要なのは、生存率の数字だけを見て一喜一憂することではなく、自分の肺がんがどの型で、どの段階で、どんな治療が想定されているのかを理解することです。
主治医から「非小細胞肺がん」「小細胞肺がん」「腺がん」「扁平上皮がん」「EGFR遺伝子変異」「PD-L1」などの言葉が出たときは、その意味を遠慮なく確認した方がよいテーマです。
組織型やバイオマーカーは、肺がんでは治療選択の中心にある情報だからです。
肺がんの「型(組織型)」と治療の違い|ここを理解しないと治療が見えにくい
肺がんは大きく、非小細胞肺がんと小細胞肺がんに分けて考えられます。
非小細胞肺がんには、腺がん、扁平上皮がんなどが含まれます。
国立がん研究センターによると、腺がんは肺がんの中で最も多い組織型で、特定の遺伝子異常を認めることが多い一方、扁平上皮がんは咳や血痰などの症状が出やすく、喫煙との関連が大きいとされています。
小細胞肺がんは増殖が速く、転移しやすいことが大きな特徴です。
この違いは、患者さんにとって非常に重要です。
たとえば、「肺がんです」と言われても、腺がんなのか、小細胞肺がんなのかで、手術が中心になるのか、最初から薬物療法が重視されるのかが変わることがあります。
肺がんの記事で最も避けたいのは、これをひとまとめにして説明してしまうことです。
肺がんでは、“肺がんの型を知ること”が、治療の全体像を知る入り口になります。
肺がんの治療方法|何が選ばれ、何が違うのか
肺がんの治療では、「どんな治療法があるか」を並べるだけでは不十分です。
患者さんが本当に知りたいのは、自分は手術できるのか、薬が中心になるのか、治療後にどのくらい息苦しさや体力低下が残るのかという点です。
肺がんでは、ステージ、組織型、遺伝子変異、全身状態を踏まえて、手術、放射線治療、細胞障害性抗がん薬、免疫チェックポイント阻害薬、分子標的薬などが組み合わされます。
手術|切除できるかどうかが大きな分かれ目
肺がんでは、比較的早い段階の非小細胞肺がんなどで手術が検討されます。
手術では、肺の一部を切除する方法から、肺葉単位で切除する方法まであり、がんの場所や広がり、呼吸機能などを踏まえて選ばれます。
患者さんにとって大きいのは、「手術できるかどうか」だけでなく、どれくらい肺を切るのか、術後の息切れはどの程度か、仕事や家事に戻れるのかという点です。
肺は呼吸に直結する臓器なので、同じ“手術”でも、胃がんや大腸がんとは気になる中身がかなり違います。
手術前には、術後の呼吸機能、階段の上り下りや歩行時の息苦しさ、持病のCOPDや心疾患の有無なども含めて確認したいところです。
肺がんの患者さんは「手術できれば安心」ではなく、手術後にどう生きるかまで見据えて考える必要があります。
薬物療法|抗がん剤、免疫療法、分子標的薬の違い
肺がんでは、薬物療法の位置づけが非常に大きいです。
抗がん剤というと一括りにされがちですが、実際には、従来型の細胞障害性抗がん薬、免疫チェックポイント阻害薬、分子標的薬では役割も副作用の出方も異なります。
特に非小細胞肺がんの一部では、遺伝子異常が見つかると分子標的薬が選択肢になり、治療の見通しが大きく変わることがあります。
腺がんで特定の遺伝子異常を認めることが多い点も、肺がんの特徴です。
患者さん目線で言えば、ここで知りたいのは「どの薬を使うのか」だけではありません。
・自分は遺伝子検査の対象なのか
・免疫療法が効きやすいタイプなのか
・治療の目的は根治なのか、進行を抑えることなのか
・副作用は何に注意すべきなのか
このあたりが、実際の不安の中心です。肺がんは“薬で流れが変わるがん”でもあるため、病理結果やバイオマーカー検査の説明をよく聞くことが大切です。
症状と進行のスピード|肺がんらしさはどこにあるのか
肺がんでは、早期には症状が出ないことも多く、進行して初めて見つかることがあります。
主な症状としては、咳、痰、血痰、胸の痛み、動いたときの息苦しさ、動悸、発熱などが挙げられます。
ただし、これらは肺炎や気管支炎などほかの呼吸器疾患にも共通するため、「この症状があれば必ず肺がん」というものではありません。
最も多い症状は咳と痰で、原因が分からない咳や痰が2週間以上続く場合や、血痰が出る場合は早めの受診が勧められています。
また、肺がんは組織型によって進み方の印象も異なります。
小細胞肺がんは増殖が速く転移しやすいとされており、非小細胞肺がんの中でも型や進行度によって症状の出方は変わります。
患者さんにとって大切なのは、「症状が軽いから大丈夫」とは限らないこと、逆に「症状がある=末期」とも言い切れないことです。
肺がんでは、症状の有無だけで重さを決めるのではなく、画像検査や病理診断で全体像を見る必要があります。
転移しやすい場所と症状|肺がんで特に気になる点
肺がんは、リンパ節、肺の中のほかの部位、胸膜、骨、脳、肝臓、副腎に転移しやすいとされています。
特に患者さんが不安を感じやすいのは、脳転移と骨転移です。
脳に転移すると頭痛やふらつき、骨に転移すると背中や肩の痛みなどが出ることがあります。
こうした症状が出ると、病気がかなり進んでいるのではないかと強い不安を抱く方が多いですが、症状の有無だけで転移の有無を決めることはできず、画像検査が重要になります。
肺がんで転移を考えるときは、「どこに転移したか」だけでなく、「その転移で何が困っているか」を見ることも大切です。
たとえば脳転移なら頭痛やふらつき、骨転移なら痛みや骨折リスク、胸膜病変なら呼吸苦、薬物療法では薬剤性肺障害や間質性肺炎のような副作用にも注意が必要です。
特に呼吸困難や咳は、がんそのものだけでなく治療の影響で起こる場合もあるため、症状が強いときは我慢せず早めに相談することが重要です。
治療後の生活|仕事・呼吸・体力はどう変わるのか
肺がんの患者さんが本当に気にするのは、「治療でどれだけ延びるか」だけでなく、治療後に普通の生活がどこまでできるかです。
手術を受けた場合は、肺の切除範囲によって息切れの程度が変わることがありますし、もともと喫煙歴があった方やCOPDがある方では、呼吸機能への影響がより問題になりやすいです。
抗がん剤や免疫療法、分子標的薬でも、倦怠感、食欲低下、皮膚症状、しびれ、薬剤性肺障害など、生活に影響する副作用が出ることがあります。
分子標的薬では皮膚トラブル、細胞障害性抗がん薬や免疫チェックポイント阻害薬などでは間質性肺炎が重大な副作用になることがあります。
仕事を続けられるかどうかは、治療内容、通院頻度、副作用の程度、仕事内容によってかなり変わります。
デスクワーク中心の方と、体力仕事の方では負担が違いますし、呼吸機能の低下があると外出や階段移動そのものが負担になる場合もあります。
そのため、治療開始前に「仕事は続けられますか」と一言で聞くだけでなく、通院の間隔、点滴の有無、息苦しさの出やすさ、休職や時短勤務の必要性まで具体的に確認しておく方が実際的です。
日常生活の工夫と緩和ケア
肺がんでは、早い段階から緩和ケアの視点を持つことが大切です。
緩和ケアは終末期だけのものではなく、痛み、息苦しさ、咳、不安、眠れなさなどを和らげながら生活の質を保つための支援です。
国立がん研究センターの肺がん冊子でも、担当医や家族と率直に話し合い、困ったときはがん相談支援センターを利用することが勧められています。
日常生活では、息苦しさや疲れやすさに応じて無理のない活動量に調整すること、食事量が落ちるときは少量ずつでも摂ること、咳や痰、呼吸苦が強いときは自己判断で我慢しないことが大切です。
肺がんは「治療」だけでなく、「息をしやすく過ごすこと」「不安を一人で抱え込まないこと」も非常に重要なテーマです。
治療費と公的制度
肺がん治療では、手術、放射線、薬物療法、遺伝子検査、長期通院などで費用負担が大きくなることがあります。
主に利用される制度としては、高額療養費制度や限度額適用認定証があり、自己負担を一定の範囲に抑えるのに役立ちます。
治療が長期化しやすい肺がんでは、早い段階で医療ソーシャルワーカーや相談支援センターに相談しておくと、経済的な見通しを立てやすくなります。
がん相談支援センターの利用は、国立がん研究センターの冊子でも案内されています。
一定の上限に抑えられます。
肺がん症例数ランキング全国TOP20
●注目したい上位病院
![]() 札幌南三条病院(北海道) 治療合計:2,304(手術有473・無1,831) |
![]() 国立がん研究センター中央病院(東京都) 治療合計:2,183(手術有801・無1,382) |
![]() 東海大学医学部付属病院(神奈川県) 治療合計:2,090(手術有236・無1,854) |
![]() 4.国立がん研究センター東病院(千葉県) 治療合計:1,863(手術有584・無1,279) 5.静岡県立静岡がんセンター(静岡県) 治療合計:1,789(手術有405・無1,384) 6.仙台厚生病院(宮城県) 治療合計:1,765(手術有270・無1,495) 7.近畿中央呼吸器センター(大阪府) 治療合計:1,689(手術有192・無1,497) 8.春日部市立医療センター(埼玉県) 治療合計:1,579(手術有218・無1,361) 9.姫路医療センター(兵庫県) 治療合計:1,505(手術有260・無1,245) 10.神奈川県立がんセンター(神奈川県) 治療合計:1,342(手術有552・無790) |
11.山口宇部医療センター(山口県) 治療合計:1,317(手術有180・無1,137) 12.東京医科大学病院(東京都) 治療合計:1,291(手術有254・無1,037) 12.大阪国際がんセンター(大阪府) 治療合計:1,291(手術有361・無930) 14.がん研究会 有明病院(東京都) 治療合計:1,278(手術有514・無764) 15.熊本大学病院(熊本県) 治療合計:1,216(手術有371・無845) 16.埼玉医科大学国際医療センター(埼玉県) 治療合計:1,215(手術有310・無905) 17.一宮西病院(愛知県) 治療合計:1,191(手術有168・無1,023) 18.渋川医療センター(群馬県) 治療合計:1,184(手術有96・無1,088) 19.自治医科大学附属病院(栃木県) 治療合計:1,161(手術有278・無883) 20.獨協医科大学病院(栃木県) 治療合計:1,144(手術有205・無939) |
※DPC対象病院・準備病院・出来高算定病院の統計 (2023年4月〜2024年3月退院患者)数字を掲載しています。
※掲載情報は公表資料に基づき作成していますが、最新の診療内容や受診条件等は各医療機関の公式情報をご確認ください。
病院・名医の選び方|肺がんでは何を重視すべきか
肺がんでは、症例数の多さは非常に重要な指標です。特に肺がんは、手術だけでなく、呼吸器内科、呼吸器外科、放射線治療科、病理診断、遺伝子検査、薬物療法、緩和ケアまで関わる領域が広いため、症例数が多い病院では診療体制が整っている傾向があります。
ただし、症例数だけで最適な病院が決まるわけではありません。肺がんでは、
・手術が中心になりそうなのか
・薬物療法が中心になりそうなのか
・遺伝子検査や分子標的薬の経験が重要なのか
・小細胞肺がんなのか非小細胞肺がんなのか
によって、重視したい強みが変わります。
国立がん研究センターでも、肺がんは組織型によって治療を分けて説明しています。
また、術後の通院、点滴治療、画像検査、再発時の対応まで考えると、通院のしやすさや地域連携の体制も無視できません。
肺がんの病院選びでは、「有名だから」「症例数が多いから」だけでなく、自分の組織型・ステージ・治療方針に合っているかを見ることが大切です。
判断の軸
・自分の組織型とステージに合った治療を得意としているか
・呼吸器外科、呼吸器内科、放射線治療、薬物療法の体制が整っているか
・バイオマーカー検査や分子標的薬、免疫療法への対応力があるか
・通院を継続しやすい環境か
・がん診療連携拠点病院やセカンドオピニオン体制を活用しやすいか
まとめ|肺がんで最も重要な考え方
肺がん治療では、正確な情報を理解したうえで、自分の肺がんの型、ステージ、遺伝子変異の有無、体の状態に合った選択を考えることが大切です。
肺がんは、同じ病名でも治療の中身が大きく異なります。だからこそ、「肺がん一般」の情報だけで判断せず、自分の病理結果や検査結果を踏まえて、納得できる形で治療や病院選びを進めていくことが重要です。
がんの名医への受診方法や、病院・医師選びのポイントについてまとめた参考ページもあります。興味のある方はあわせてご参照ください。
●がんの名医に教えて頂いた「病院・医者選びのポイント」
●がんの名医に教えて頂いた「名医に診てもらう方法」





