乳がんと診断された方へ|まず最初に知っておくべきこと
乳がんと診断された直後は、「自分のがんはどのタイプなのか」「温存できるのか、それとも全摘か」「抗がん剤は必要なのか」「仕事や生活はどうなるのか」といった不安が一気に大きくなります。
乳がんは、同じ「乳がん」という診断でも、がんの性質によって治療方法や再発リスクが大きく異なる病気です。
特に重要なのが、以下のような分類です。
・ホルモン受容体の有無(ER・PgR)
・HER2の有無
・増殖の速さ(Ki-67)
これらをもとに「サブタイプ」と呼ばれる分類が行われ、抗がん剤、ホルモン療法、分子標的薬など、選択される治療が変わります。
本ページでは、
・ステージ別生存率
・乳がんのサブタイプと治療の違い
・手術(温存・全摘)と再建
・薬物療法(抗がん剤・ホルモン療法・分子標的薬)
・術後の生活と副作用
・病院選び
を一つの流れで整理し、治療や病院選びを考える際の参考となる情報をまとめています。
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乳がんステージ別生存率(全国集計)
下記は、院内がん登録の公表データをもとに整理した乳がんのステージ別生存率です。
生存率データには、ネット・サバイバル(純生存率)の数値を記載しています。
| stage | 5年生存率 (2015年診断) | 10年生存率 (2012年診断) |
| Ⅰ | 99.0% | 93.7% |
| Ⅱ | 94.7% | 85.4% |
| Ⅲ | 81.1% | 63.8% |
| Ⅳ | 40.5% | 17.0% |
| 全平均 | 91.8% | 82.5% |
出典:国立がん研究センター「院内がん登録生存率集計結果閲覧システム」
※がん種および診断年を選択して表示される全国集計データをもとに整理しています。
※生存率は院内がん登録の集計に基づく参考値であり、個々の予後を示すものではありません。
生存率の正しい見方|乳がんは「タイプ」で大きく変わる
乳がんは、全体として生存率が高いがんです。
しかし、この数字だけを見て安心できるわけではありません。
乳がんでは、「ステージ」だけでなく、がんの性質(サブタイプ)によって、再発のしやすさや治療の内容が大きく変わるためです。
たとえば、同じステージⅡであっても、ホルモン受容体陽性の場合は、再発までの期間が長く、ホルモン療法を中心に長期的に管理していく治療になります。
一方で、トリプルネガティブの場合は、再発のタイミングが比較的早い傾向があり、抗がん剤による治療が重要になります。
また、HER2陽性の場合は、分子標的薬の登場によって治療成績が大きく改善しており、以前とは見通しが変わってきています。
このように乳がんでは、「ステージ」だけでなく「サブタイプ」をあわせて理解することが重要です。
乳がんのサブタイプと治療の違い|ここを理解しないと判断を誤る
乳がんの治療を考えるうえで、最も重要なのがサブタイプです。
主に以下の3つに分けて考えられます。
①ホルモン受容体陽性タイプでは、ホルモン療法が治療の中心になります。再発予防のために5年から10年と長期間にわたって治療を継続するのが特徴です。
②HER2陽性タイプでは、分子標的薬と抗がん剤を組み合わせた治療が行われます。以前は再発リスクが高いとされていましたが、現在は治療の進歩によって大きく改善しています。
③トリプルネガティブでは、ホルモン療法や分子標的薬が使えないため、抗がん剤が中心となります。再発のタイミングが比較的早い傾向があるため、治療の組み立てが重要になります。
この違いを理解していないと、「なぜ自分だけ抗がん剤なのか」「なぜ長く薬を飲み続けるのか」といった疑問が解消されません。
乳がんの治療方法|「自分はどうなるのか」を具体的に考える
乳がんの治療で多くの方が悩むのは、治療の種類そのものよりも、「自分の生活がどう変わるのか」という点です。
手術|温存か全摘か、その後の生活まで含めて考える
乳がんでは、乳房温存手術と全摘手術のどちらかが選択されます。
どちらになるかは、腫瘍の大きさや広がり、複数あるかどうかなどによって決まりますが、患者さんにとって重要なのはその先です。
・見た目はどう変わるのか
・再発率に差はあるのか
・再建はできるのか
これらは生活や心理面に大きく関わります。
乳房再建|治療の一部として考えるべき選択肢
乳房再建は、「後から考えるもの」ではなく、最初の治療選択の段階で検討すべきテーマです。
手術と同時に行う方法と、治療が落ち着いてから行う方法があり、インプラントを使う方法と、自分の組織を使う方法があります。
どの方法が適しているかは、治療内容や体の状態によって変わるため、早い段階で相談しておくことが重要です。
薬物療法|乳がんは“長期管理の病気”
乳がんは、手術で終わる病気ではありません。
特にホルモン受容体陽性の場合は、再発予防のために5年から10年にわたってホルモン療法を継続します。
これは他のがんにはあまり見られない特徴です。
抗がん剤は、再発リスクが高い場合に術前または術後に行われます。
HER2陽性では分子標的薬が加わり、治療効果を高めます。
副作用と生活への影響|「続けられるか」が重要になる
乳がんの治療では、副作用の強さだけでなく、どれくらいの期間続くかが問題になります。
抗がん剤では脱毛や吐き気、倦怠感などが出ることがありますが、期間は比較的限られています。
一方でホルモン療法は長期間続くため、関節痛や更年期症状、骨密度低下などが日常生活に影響することがあります。
また手術後は、リンパ浮腫や腕の動かしにくさが出ることもあり、早い段階でのケアが重要です。
治療後の生活|仕事・育児とどう両立するか
乳がんでは、「治療が終わる」というよりも、治療と生活を両立していく期間が長いのが特徴です。
通院は長期間続き、副作用の出方にも個人差があります。
そのため、
・通院の頻度
・副作用の出やすさ
・仕事の内容
を踏まえて、現実的な生活設計を考える必要があります。
遺伝性乳がん(HBOC)|家族にも関係するテーマ
乳がんの一部には、遺伝的な要因が関係している場合があります。
BRCA1・BRCA2遺伝子の変異がある場合、本人だけでなく家族にも影響する可能性があります。
そのため、若年発症や家族歴がある場合は、遺伝カウンセリングや検査を検討することもあります。
乳がん症例数ランキング全国TOP20
●注目したい上位病院
![]() くまもと乳腺・胃腸外科病院(熊本県) 治療合計:2,001(手術有427・無1,574) 乳腺を専門に診断から治療、アフターケアまで一貫して行います。臨床医と病理診断医の緊密な連携により、迅速な情報共有と専門医による分かりやすい説明を実践。専門チームが一人ひとりに適した治療方針を提案し、副作用ケアまで丁寧にサポートする体制が特徴です。 |
![]() 東北公済病院(宮城県) 治療合計:1,791(手術有476・無1,315) 乳腺外科と形成外科が連携する「乳腺治療・再建センター」を軸に、診断から再建まで一貫して対応。特に一期的再建に力を入れ、乳房喪失感を軽減する治療を実践しています。女性専用フロアやリンパ浮腫外来など、術後のQOLに配慮した専門チームによるサポートも特徴です。 |
![]() がん研究会 有明病院(東京都) 治療合計:1,692(手術有1,535・無157) がん研有明病院は、年間1,000件超の手術実績を誇る国内最大級の乳がん拠点です。乳腺外科、腫瘍内科、形成外科等が連携し、低侵襲な温存療法や高度な乳房再建に幅広く対応。薬物療法から遺伝性乳がんの診療まで、質の高いチーム医療を一貫して提供しています。 |
![]() 4. 相良病院(鹿児島県) 治療合計:1,597(手術有900・無697) 5. 北海道がんセンター(北海道) 治療合計:1,296(手術有621・無675) 6. くまもと森都総合病院(熊本県) 治療合計:1,279(手術有266・無1,013) 7. さがら病院宮崎(宮崎県) 治療合計:1,089(手術有570・無519) 8. 九州がんセンター(福岡県) 治療合計:1,044(手術有335・無709) 9. 四国がんセンター(愛媛県) 治療合計:992(手術有387・無605) 10. 聖路加国際病院(東京都) 治療合計:988(手術有961・無27) |
11. 聖マリアンナ医科大学病院(神奈川県) 治療合計:957(手術有907・無50) 12. 埼玉県立がんセンター(埼玉県) 治療合計:932(手術有515・無417) 13. 大阪国際がんセンター(大阪府) 治療合計:897(手術有604・無293) 14. 国立がん研究センター中央病院(東京都) 治療合計:867(手術有699・無168) 15. さいたま赤十字病院(埼玉県) 治療合計:838(手術有640・無198) 16. 亀田総合病院(千葉県) 治療合計:830(手術有517・無313) 17. 神奈川県立がんセンター(神奈川県) 治療合計:820(手術有456・無364) 18. 東京都立多摩総合医療センター(東京都) 治療合計:723(手術有416・無307) 19. 大阪大学医学部附属病院(大阪府) 治療合計:720(手術有454・無266) 20. 浜の町病院(福岡県) 治療合計:707(手術有278・無429) |
※DPC対象病院・準備病院・出来高算定病院の統計 (2023年4月〜2024年3月退院患者)数字を掲載しています。
※掲載情報は公表資料に基づき作成していますが、最新の診療内容や受診条件等は各医療機関の公式情報をご確認ください。
病院・名医の選び方|乳がんで本当に見るべきポイント
乳がんの病院選びでは、「有名な病院かどうか」よりも、自分の治療に合っているかが重要です。
乳がんは、手術だけで完結する病気ではなく、手術、薬物療法、放射線治療、再建、長期フォローまでを含めた“総合的な治療”になります。
そのため、まず確認したいのは「乳腺専門医がいるかどうか」です。
乳がんは専門性の高い領域であり、診断・手術・薬物療法の判断に経験差が出やすい分野でもあります。
さらに重要なのが、チーム医療の体制です。
具体的には、乳腺外科だけでなく、腫瘍内科、放射線科、形成外科(再建)、病理診断などが連携しているかどうかが、治療の質に直結します。
特に見落とされやすいのが「再建」と「薬物療法」の体制です。
乳房再建を希望する場合は形成外科が必要になりますし、サブタイプによっては抗がん剤や分子標的薬、ホルモン療法が長期間続くため、薬物療法の経験が豊富かどうかも重要です。
また、乳がんは長期にわたって通院が必要になるため、通院のしやすさも現実的な判断材料になります。
「遠くても有名病院が良い」と考えがちですが、実際には治療の継続性の方が重要になるケースも少なくありません。
乳がんの病院選びでは、「どこが有名か」ではなく、「自分の治療を安心して任せられる体制があるか」という視点で判断することが大切です。
まとめ|乳がんで最も重要な考え方
乳がんでは、「ステージ」だけでなく、「サブタイプ」と「治療の組み合わせ」によって、治療内容もその後の経過も大きく変わります。
同じ乳がんでも、手術中心になる人、抗がん剤が必要な人、長期間ホルモン療法を続ける人など、状況は一人ひとり異なります。
そのため重要なのは、一般的な情報だけで判断するのではなく、自分のがんの性質と治療の全体像を理解したうえで選択することです。
特に乳がんでは、治療が長期間にわたることが多く、仕事や家庭との両立、体調の変化、見た目の問題など、生活への影響も無視できません。
だからこそ、
・自分のがんのタイプ(サブタイプ)を理解する
・治療がどのくらいの期間続くのかを把握する
・生活とのバランスを含めて現実的に考える
この3つの視点を持つことが、納得できる選択につながります。
がんの名医への受診方法や、病院・医師選びのポイントについてまとめた参考ページもあります。興味のある方はあわせてご参照ください。
●がんの名医に教えて頂いた「病院・医者選びのポイント」
●がんの名医に教えて頂いた「名医に診てもらう方法」





